植えて5年でこの高さ。シマトネリコの根って、本当に家の基礎まで傷めるんですか?

シンボルツリーとして圧倒的な人気を持つシマトネリコ。一方で、ネット検索すると「植えてはいけない」という物騒な言葉が並びます。今回は、松江市にお住まいの方から届いた「根が家を壊すのではないか」というご相談に、樹木医の立場からお答えします。

ご相談:松江市・Kさんより

新築のときに植えたシマトネリコが、5年で2階の窓に届く高さになりました。株立ちの3本とも幹が太くなり、夏はきれいなのですが、最近になって「シマトネリコの根は家の基礎を壊す」という記事を読んで急に不安になっています。玄関前の土間コンクリートに、細いひび割れも出てきました。今のうちに抜いたほうがいいのでしょうか。それとも、どうにか付き合っていける木なのでしょうか。

樹木医の回答

結論からお伝えします。住宅の鉄筋コンクリート基礎がシマトネリコの根で壊されるケースは、実際にはごくまれです。ただし、Kさんが気づかれた土間コンクリートのひび割れのほうは、この木で本当に起こりやすいトラブルです。「大げさな噂」と「現場で本当に起きること」を分けて考えていきましょう。

そもそもシマトネリコは、沖縄や台湾の木です

シマトネリコ(学名 Fraxinus griffithii)はモクセイ科トネリコ属の高木で、原産地は沖縄、台湾、中国南部、インド、フィリピンなど。日本の庭木のなかでは、かなり南方系の樹木です。暖かく雨の多い土地で育ってきた木なので、生育期の伸びが非常に速いという性質を持っています。条件がよければ植えて3年で3m、10年で10mを超えることも珍しくありません。Kさんのお庭で5年で2階の窓に届いたのは、木が弱っているどころか、むしろ「順調すぎる」状態です。

羽状複葉の細かい葉を茂らせたシマトネリコの樹形
画像:Krzysztof Ziarnek, Kenraiz(Wikimedia Commons) / CC BY-SA 4.0

一方で寒さは苦手で、耐寒性の目安はおおむねマイナス3〜5℃程度とされます。山陰の平地であれば冬を越せますが、松江市や出雲市の内陸部、あるいは風の通り道になっている敷地では、冬の季節風で葉が茶色く傷んだり、常緑樹のはずが春先にごっそり葉を落としたりします。積雪の重みで枝が裂けることもあります。「山陰では暖地よりやや無理をしている木」という前提は、頭に置いておいてください。

根が持ち上げるのは、基礎ではなく土間と配管まわり

シマトネリコの根は、地中深くまで太い根を下ろすタイプではなく、地表近くを浅く、広く走る細根型です。ここが「家を壊す」という話の出どころになっています。

ただし、現代の住宅の基礎は鉄筋の入ったベタ基礎や布基礎で、その下には転圧された砕石層があります。この構造を根が押し割るには相当な条件が必要で、庭木の距離で起こることはまずありません。実際に現場でよく見るのは、次のような被害です。

  • 玄関アプローチや犬走りの土間コンクリートが持ち上がり、ひび割れる
  • 境界ブロックやレンガの縁石が押されて目地が開く
  • 雨水枡や排水管の継ぎ目に細根が入り込み、詰まりの原因になる
  • 駐車場の土間の目地から根が顔を出す

Kさんの土間コンクリートのひび割れは、まさにこの一つ目に当たる可能性があります。木の根元から土間までの距離を測ってみてください。幹から2m以内に土間があるようでしたら、根の影響を疑って差し支えありません。逆に、家の壁面から十分に離れているなら、建物そのものへの心配は過剰です。

今から打てる手は、大きく3つあります

「抜くかどうか」を決める前に、まず試していただきたい手当てがあります。

1つめは、芯止めで背丈を止めることです。一番高く伸びている主幹の先端を、希望する高さのところで切り戻します。上に伸びる勢いが分散し、それ以上高くなりにくくなります。数年に一度で効果が続きますので、毎年の作業にはなりません。

2つめは、剪定の時期を守ることです。シマトネリコの剪定は、生育が落ち着く3月ごろと、花が終わった8〜9月ごろが適期とされています。ちょうど今の時期は後者に当たります。逆に、真冬に強く切ると寒害と重なって株を弱らせるので避けてください。地上部を毎年適正な量に抑えていれば、根も際限なく広がることはありません。木の地上部と根は、おおよそ釣り合いを取って育つからです。

3つめは、根の行き先を区切ることです。土間や配管に向かう方向だけ、幹から1.5m前後の位置に溝を掘り、防根シートを立てて埋め戻します。根を全周で締め上げると木が傷みますので、「守りたい方向だけ」に入れるのがコツです。

それでも合わないと感じたら

シマトネリコには、もうひとつ知っておきたい性質があります。羽のついた小さな種を大量につけ、風に乗って飛んだ先で発芽するという点です。お隣の砂利敷きや花壇から見慣れない実生が出てきたら、この木の子どもかもしれません。気になる場合は、実がつく前の段階で花房を落としておくと防げます。

移植については、幹が太くなるほど難しくなります。掘り取れる根の量に限りがあり、大きな株を動かすと活着しないことがあるためです。「いずれ小さくしたい」「別の場所に移したい」というお考えがあるなら、早いほど成功率は上がります。

まとめ

シマトネリコは「植えてはいけない木」ではなく、性質を知らずに植えると持て余す木です。伸びが速いこと、根が浅く広く張ること、寒風と雪に弱いこと。この3つを前提に、芯止めと適期剪定、必要なら防根処理を組み合わせれば、山陰の庭でも十分に付き合っていけます。Kさんの株も、いま手を入れれば抜く必要はないでしょう。

Takezo Farmでは、出雲市・松江市・米子市を中心に、庭木の診断から剪定、根まわりの処置、外構との取り合いのご相談まで承っております。「大きくなりすぎた木をどうするか」は、木だけを見ても答えが出ないことが多く、土間や配管の位置を含めて敷地全体で考える必要があります。気になる木がありましたら、お気軽にご相談ください。

庭木の状態が気になる方は、樹木医による庭木の診断・お手入れもご覧ください。ご相談はお庭の相談予約から承っています。

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