秋雨と台風で雨の多い季節になりました。今回は、雨上がりの庭の「ぬかるみ」についてのご相談です。水はけの悪さは庭木にとって想像以上に深刻な問題で、しかも原因は多くの場合、目に見えるところにはありません。
ご相談
「出雲市に家を建てて三年になります。気になっているのが庭の水はけです。雨がやんで二日たっても、シンボルツリーの足元と、その周りの芝生の一角だけがずっとぬかるんでいます。長靴でないと入れないほどで、そこだけ芝生も薄くなってきました。木のほうも、去年から新芽の伸びが明らかに悪いです。ホームセンターで腐葉土を買ってきて表面にすき込んでみましたが、まったく変わりません。土が悪いのだと思うのですが、どうすればいいのでしょうか。」(出雲市・40代男性)
樹木医の回答
腐葉土をすき込んでも変わらなかった、というのが大事な手がかりです。結論から申し上げると、原因はおそらくあなたが触れた表面の土ではなく、その30センチ下にあります。表面だけを何度耕しても水が引かないのは、水の出口が下でふさがれているからです。

犯人は、目に見えない「締まった層」
土は一枚岩ではなく、層になっています。上の写真は、車両が通った場所の土を掘り返した断面です。同じ土でも、上から圧力がかかった部分とそうでない部分では、締まり方がはっきり違うのがわかります。
宅地の造成では、地盤を安定させるために重機で土を何度も踏み固めます。これは家の基礎にとっては必要な工事ですが、庭になる部分の土も同じように締め固められます。その結果、地表から20〜40センチほどの深さに、水も空気もほとんど通さない硬い層ができることがあります。造園や農業の分野では硬盤層と呼ばれるものです。
この層があると、雨水は地下へ抜けられず、硬い層の上にたまります。庭木の根は水に浸かったまま酸素を吸えなくなり、数日この状態が続くと根の先端から傷み始めます。土の中の粗い隙間が全体の一割を切ると透水不良と判定される、という土壌診断の目安がありますが、締め固められた土はまさにその状態です。新芽の伸びが落ちてきたというのは、根が酸欠で減ってきているサインと考えられます。
山陰の宅地には、この条件がそろいやすい
山陰地方では、この問題が起きやすい事情がいくつか重なります。ひとつは地形です。出雲市では谷や傾斜地を埋めて造成された宅地の位置を示す「大規模盛土造成地マップ」が公表されています。本来は地震時の防災情報ですが、裏を返せば、もともと谷だった場所を埋めて宅地にした住宅地が決して少なくない、ということでもあります。
もうひとつは土質です。松江市の平野部をはじめ、宍道湖や中海の周辺には軟弱な粘土層が厚く堆積していることが地盤の調査でも知られています。粘土は粒子が細かく、もともと水を通しにくい土です。そこに造成時の締め固めが加われば、水はますます抜けなくなります。米子市の弓ヶ浜側のように砂質で水はけの良いエリアもあり、同じ山陰でも数キロ離れるだけで土の性格はまったく変わります。
スコップ一本でできる、うちの土の見分け方
本格的な土壌調査の前に、ご自身で確かめられることがあります。
- スコップの刺さり方を見る:ぬかるむ場所で、体重をかけてスコップを垂直に踏み込みます。ある深さで急に足応えが硬くなって止まるなら、そこが締まった層です。深さを覚えておいてください。
- 穴に水を入れてみる:直径・深さとも30センチほどの穴を掘り、水をなみなみと注ぎます。数時間たっても水位がほとんど下がらない、翌朝も水が残っている、という場合は排水不良です。
- 掘り上げた土のにおいを嗅ぐ:どぶのような臭いがしたり、土が青灰色にくすんでいたら、長く酸欠状態にあった土です。
- 根の向きを確かめる:木の根元を浅く掘って、根が下ではなく横に浅く広がっているなら、下へ行けずに逃げている証拠です。
表面に土を足すだけでは、たいてい直りません
ここで多くの方がやってしまうのが、良い土を買ってきて表面に盛る、という対処です。しかし下がふさがったままでは、盛った土は水を受ける皿になるだけで、状況はかえって悪くなります。さらに、幹の根元に土を盛る「覆土」は樹木医がもっとも警戒する行為のひとつです。根の呼吸を妨げ、幹の根元を蒸れさせて腐らせます。木は数年かけてゆっくり弱るので、原因に気づかれないまま枯れてしまうことも珍しくありません。
打てる手を、効き目の順に
- 締まった層に穴を開ける:木の枝先の真下あたりに、締まった層を突き抜ける深さまで直径10センチ程度の縦穴をいくつも開け、軽石や粗い腐葉土などを詰めます。水と空気の通り道になります。
- 暗渠(あんきょ)排水を入れる:庭の低い側へ向けて溝を掘り、有孔管と砕石を埋設して水を逃がします。手間はかかりますが、根本的で確実です。
- 盛土花壇にして根鉢を上げる:これから植える木なら、周囲を縁石などで囲って一段高くし、その中に木を植えます。悪い土と戦わずに済む、もっとも現実的な方法です。
- 樹種を土に合わせる:どうしても改良しきれない場所なら、湿った土に耐えるハンノキやサワラ、ヤブツバキなどに切り替えるのも立派な解決です。
なお、粘土に砂だけを混ぜるのはおすすめしません。分量を誤ると粘土と砂が噛み合って、かえって硬い土になります。混ぜるなら、堆肥やバーク堆肥のような有機物を、砂と一緒に十分な量で入れてください。
まとめ
水はけが悪い庭の原因は、たいてい表面の土ではなく、その下に隠れた締まった層にあります。まずはスコップを垂直に踏み込んで、どの深さで止まるかを確かめてみてください。それがわかるだけで、打つべき手はかなり絞り込めます。
とはいえ、暗渠排水の勾配のとり方や、既に植わっている大きな木の根を傷めずに改良する方法は、現場を見ないと判断が難しいところです。出雲市・松江市・米子市を中心に山陰エリアで庭木の管理と外構工事を手がけるTakezo Farmでは、庭の排水診断から土壌改良、植栽のご相談まで承っております。「雨のあと、いつまでも乾かない場所がある」という段階でご相談いただければ、木を枯らさずに済む選択肢がぐっと広がります。どうぞお気軽にお声がけください。






