台風の前に庭木を短く切ってしまって大丈夫?

9月に入り、台風のニュースが気になる季節になりました。「大きくなった庭木が心配だから、来る前に短くしておこう」——毎年この時期、そう考えて慌ててノコギリを持ち出す方がいらっしゃいます。その判断、実は半分正解で半分は逆効果です。今回は出雲市の方からのご相談にお答えします。

ご相談:台風の前に、庭木は短く切っておくべきでしょうか

出雲市の海寄りの住宅地に住んでいます。10年ほど前に植えたシマトネリコが4メートル近くまで伸び、台風のたびに大きくしなって見ていて怖くなります。近所の方に「台風の前に思い切って短く切っておけば安心だ」と言われたのですが、その場でバッサリ詰めてしまって木は大丈夫なのでしょうか。支柱も立てたほうがいいのか、立てるならどれくらいきつく縛ればいいのかも分かりません。(出雲市・40代)

樹木医の回答:「詰める」のではなく「透かす」のが正解です

結論から申し上げると、台風対策の剪定でやるべきなのは「短く詰めること」ではなく「風を通すこと」です。もちろん樹高を下げること自体は強風対策として効果があります。ただ、台風直前に慌てて枝先をぶつ切りにするのは、木にとっても防災上も得策ではありません。理由を順にご説明します。

2本の支柱とひもで支えられた植栽木
画像:Fructibus (Wikimedia Commons) / CC0 1.0

風は「長さ」ではなく「葉の面」で受けている

木が強風で揺さぶられるのは、枝が長いからというより、茂った葉が大きな面となって風をまともに受け止めるからです。帆のような状態になっているところに突風が当たるから、幹の根元に大きな力がかかります。逆にいえば、枝葉の密度を下げて風が抜けるようにしてやれば、木にかかる負担はぐっと減ります。これが「透かし剪定」です。外側の葉を刈り込むのではなく、内側の要らない枝を根元から抜く。同じ手間でも、効果はまったく違います。

台風前に抜いておきたい枝

  • 平行枝……同じ向きに上下並んで伸びた枝。風をまともに受けるので、どちらか一方を抜きます。
  • 交差枝……枝どうしが交差している箇所。強風で擦れ合って幹肌に傷ができ、そこから腐朽菌が入ります。
  • 車枝……幹や太枝の一カ所から何本も枝が出ている部分。枝葉が集中して風の抵抗が大きくなります。
  • 一本だけ突出して伸びた徒長枝……周囲より飛び出した枝は真っ先に折れ、落下すると危険です。

直前に太い枝を切ってはいけない理由

太枝を落とすなら、台風シーズンの前にゆとりをもって済ませておきたいところです。切り口は塞がるまでに時間がかかり、直後に暴風雨にさらされると、そこが腐朽菌の入り口になりやすいからです。切る位置も重要で、幹と枝の境目(枝の付け根の膨らみ)を残して切れば切り口は自然に塞がっていきますが、途中で切ったり、逆に幹すれすれまで削ったりすると枯れ込みや腐れを招きます。「今週末に台風が来る」という段階なら、太枝には手を出さず、細い徒長枝を抜くだけにとどめてください。

支柱は「がっちり固定」が正解ではありません

ご質問の縛り方ですが、多くの方が誤解されている点です。支柱は2本立てて三角形に支えるのが基本で、ひもは少し緩めに結びます。木がある程度揺れることで風のエネルギーを自分で吸収し、幹や根への衝撃を逃がしてくれるからです。完全に動かないよう固定してしまうと、力の逃げ場がなくなって根元から傷みます。

もうひとつ、すでに数年前から支柱を立てているお宅は、この機会に結束部分を確認してください。ひもが緩んで役目を果たしていないか、逆に幹が太ってひもが食い込んでいるかのどちらかになっていることがよくあります。食い込みは水や養分の通り道を絞めつけるので、見つけたら結び直しが必要です。

山陰で見落とされがちな「潮風害」

出雲市や松江市、米子市のように日本海が近い地域では、風そのものより台風が運んでくる潮のほうが庭木に効いてしまうことがあります。塩分は海岸から10キロ以上離れた場所でも運ばれます。葉に塩が付くと水分が奪われ、数日後に葉先から茶色く枯れ込んでくる——「風では折れなかったのに、なぜか後から傷んだ」という相談の多くはこれです。

対策はただひとつ、台風が抜けたらできるだけ早く、樹木全体に真水をかけて塩分を洗い流すこと。とくに落葉樹は常緑樹より葉が潮に弱いので、頭からしっかり洗ってください。すでに茶色くなってしまった葉は水をかけても元には戻りません。緑が残っている部分は残し、茶色くなった箇所から先を切り戻します。このとき「弱ったから」と大量の水や肥料を与えるのは逆効果です。静かに回復を待つのが、いちばんの手当てになります。

まとめ

台風対策の剪定は、短く詰めることではなく、内側の枝を抜いて風を通すこと。直前の強剪定は避け、支柱はやや緩めに。そして山陰では、通過後の真水洗いまでが一連の対策です。

Takezo Farmでは、出雲市・松江市・米子市を中心に、台風前の予防剪定から、被害を受けた庭木の診断・切り戻し、支柱の設置と点検までご対応しています。「自分では登れない高さになってしまった」「毎年台風のたびに不安になる」というお庭は、シーズンが本格化する前に一度ご相談ください。