実家の庭を片付ける「庭じまい」のご相談が増えています。そのとき、多くのご家族が迷われるのが石灯ろうや庭石です。重くて運べない、でも捨てるのは忍びない。出雲には、出雲流庭園をはじめとする庭の文化があり、そこで使われてきた灯ろうには、職人の手仕事と家族の時間が刻まれています。
庭じまいで行き場をなくす灯ろう
庭じまいでは、木の伐採・抜根とあわせて、灯ろうや庭石の撤去も行います。これまでは処分するしかないケースも少なくありませんでした。
当社に寄せられる灯ろうや庭石の撤去のお問い合わせは、年間およそ50件。そのうち20〜30件ほどは、実際に処分に至っています。以前、灯ろうだけの引き取りを受け付けていた時期にも、毎月1〜2件のお問い合わせがありました。庭じまいや伐採・抜根、庭石の撤去のご相談は、いまも増え続けているのが実情です。
灯ろうに「明かり」をもう一度
当社が引き取った灯ろうの中には、松江市宍道町の来待(きまち)地域でしか採れない、希少な国産の石で作られたものもあります。この石は「来待石(きまちいし)」と呼ばれ、来待石で作られた灯ろうは、全国的に「出雲石灯ろう」として知られています。
松江藩主の松平家は、この石の価値を認め、藩の許可なく領外へ持ち出すことを禁じた「御止石(おとめいし)」としていました。色合いの美しさに加え、灯ろうや細工物に加工しやすいことから、大切に扱われてきた石です。
来待石は、太古の火山灰や砂が堆積して固まり、それが隆起して地表に現れた砂岩です。石としては比較的やわらかいため、彫刻や細工がしやすいのが特長です。
灯ろうによく使われる石には、兵庫県の御影地方で採れる御影石もあります。御影石は白っぽく、わびさびの風合いが出るまでには長い年月がかかります。一方、来待石は最初から土のような落ち着いた色をしていて、日本人が好む、やわらかでわびさびを感じさせる風合いを持っています。
さらに、ふつうの石はほとんど水を吸いませんが、来待石は内部に細かな気泡が多く、水分をよく吸います。そのため苔がつきやすく、灯ろうに苔がむした趣のある姿になりやすいのです。湿度が高く苔の育ちやすい出雲地方の日本庭園には、まさにうってつけの石だといえます。
灯ろう×盆栽×光。日本の庭の新しいかたち
こうした歴史ある灯ろうも、庭じまいで引き取ったり、処分の対象になったりすることがあります。そこで当社では、石灯ろうの一部を生かして新しい作品に生まれ変わらせる取り組みを始めました。灯ろうの「火袋(ひぶくろ)」と呼ばれる、明かりを入れる部分にLEDライトを組み込み、さらに盆栽を植木鉢のように納めることで、「光る盆栽」というアート作品に仕立てています。
捨てられるはずだった灯ろうに、もう一度明かりを灯す。日本の庭の新しいかたちとして、当社が開発したものです。
不要になった庭を「資材」として循環させる
私たちは、撤去した灯ろうや庭石を、別の庭や展示場で活かす取り組みを始めています。
日本庭園といえば本来、広い土地に大きな石を運び込み、多くの職人が何か月、ときには何年もかけてつくるものです。しかし現代の住まいでは、庭にそれほど広い面積は取れません。つくるための費用に加えて、その後の維持管理まで考えると、昔ながらの日本庭園を持ち続けるのは難しいのが現実です。
一方で、日本庭園は日本の歴史を代表する文化のひとつであり、いまでは海外でも人気を集めています。できることなら、この文化は残していきたい。そこで私たちは、小さくても日本庭園のルーツである庭園文化の形やイメージ、その背景にある歴史や文化を伝えられるものはないだろうかと考えました。
その答えが、灯ろうの一部を使って、その中に日本庭園を小さく再構築するという方法です。不要になった灯ろうを「捨てるもの」ではなく「資材」として生かし、新しい形で日本庭園の歴史と文化を次の世代へ伝えていく。それが、私たちが考えた循環の仕組みです。
実家の庭の片付けで迷ったら
「残したいもの」と「手放すもの」を一緒に整理するところからお手伝いします。大木伐採・庭じまいのページもご覧ください。






