ご相談
松江市に住んでいます。5年前に植えたハナミズキが、今年の夏に入ってから急に元気をなくしました。葉の先が茶色くカサカサになり、下のほうの葉は黄色くなって落ちています。
枯らしてはいけないと思い、7月からは毎朝ホースでたっぷり水をやっているのですが、まったく良くなりません。水が足りないのでしょうか。それとも水のやりすぎで根が腐っているのでしょうか。どちらか分からず、水をやるのが怖くなってしまいました。(松江市・50代)
樹木医からの回答
夏の終わりにいちばん多くいただくご相談です。そして「水切れか、根腐れか」で迷ってしまうのには、はっきりした理由があります。
結論から申し上げると、葉の見た目だけで判断するのは難しく、土を掘って確かめるのが最短です。そのうえで、毎朝たっぷり水をやって悪化しているのであれば、根腐れ側を疑うほうが順当です。

なぜ症状がそっくりになるのか
木にとっては、どちらも最終的に「根から水を吸えていない」という同じ状態に行き着くからです。水切れは土に水がないから吸えません。根腐れは逆に、土の隙間が水で埋まって根が酸素を吸えなくなり、傷んで吸水力を失います。入口は正反対でも、出口はどちらも「水不足の葉」なのです。
厄介なのは、根腐れの木を水切れだと思ってさらに水をやると、症状がどんどん進むこと。ご相談の「毎朝やっているのに悪化している」という点が、まず気になりました。
自宅でできる見分け方 3つ
1. 朝いちばんの状態を見る
純粋な水切れなら、日中しおれても涼しい夕方から翌朝にはある程度もち直します。根がまだ生きているサインです。反対に朝から葉が力なく垂れたまま、あるいは下葉が黄色くなって落ち続けるなら、根の側が傷んでいると考えたほうがよいでしょう。
2. 土を掘って手で握る
いちばん確実で、道具のいらない方法です。幹から離れた枝先の真下を、スコップで20〜30cmほど掘ってみてください。水を吸う細い根はそのあたりに集まっています。
- サラサラで握っても固まらない → 水切れ寄り
- ベタッと重く、握ると粘土団子のように形が残る → 過湿寄り
- 穴の底に水が染み出す、ドブのような匂いがする → 根腐れを強く疑う
粘土質の土は表面だけ早く乾いて硬くなり、その下は水浸しということが珍しくありません。表面の乾き具合はあてになりません。
3. 根と幹の根元を見る
出てきた細い根をつまんでみてください。健全な根は白っぽく張りがあり、折るとプツンと手応えがあります。傷んだ根は黒褐色で、指でしごくと表面の皮がスルッと抜け、芯だけが残ります。この感触が出たら根腐れの可能性が高い状態です。あわせて、地際の樹皮が黒く変色していないか、根元にキノコが出ていないかも確認を。キノコは地中で腐りが進んでいるサインです。
山陰の宅地で根腐れが起きやすい土の事情
松江市や出雲市、米子市の住宅地を回っていて感じるのは、もともと水田だった土地を造成した宅地が多いことです。水田は水を溜めるための土地で、下に水を通しにくい層があります。そこへ造成で重機が入って地面が締め固められ、上に真砂土などを客土して仕上げる。すると硬い層がフタのように残り、植え穴に水が溜まる——鉢に受け皿を敷いたような状態になります。
しかも山陰は冬の降水量が多く、梅雨も長い地域です。夏の暑さより一年を通した根の「濡れっぱなし」がじわじわ効いていて、今年の暑さが引き金になっただけ、というケースをよく見ます。
あわせて確認したい「深植え」
健全に植わった木は、地際で幹が末広がりになり、太い根の張り出し(根張り)が見えます。ここが土に埋まって幹が電柱のようにストンと地面に刺さって見えるなら、深植えの疑いあり。太い根が呼吸しにくく、幹の樹皮も湿った土に触れて傷みます。後から土を盛ったり砂利を重ねたりして深くなることもあります。根張りが見えるまで少しずつ土を除くだけでも、状況が変わることがあります。
どう手を打つか
根腐れ寄りだった場合
- まず水やりを止める。掘って湿っているうちは追加の水は不要です。
- 枝先の下あたりに直径10cm・深さ50〜60cmほどの縦穴を数か所あけ、軽石などの粗い資材を詰めて水と空気の抜け道をつくる。
- 水が溜まりやすい低い場所なら、暗渠(あんきょ)排水で余分な水を排水桝へ逃がす工事も選択肢に。
- 弱った木への施肥は逆効果。回復してからにする。
水切れ寄りだった場合
- 回数を増やすのではなく、1回の量を増やす。深さ30cmまで届く量を、間隔をあけて。
- かける位置は幹元ではなく枝先の真下をぐるりと。細根はそこにあります。
- 時間帯は早朝が最適。日中の高温時は避ける。
- 株元にバークチップなどを5cmほど敷くと乾燥を抑えられます。幹には触れないように。
大きな手当ては秋を待つ
強い剪定も、根を大きく掘り返す作業も、暑さで消耗した木にはさらなる負担です。排水改良や移植の本来の適期は、気温が落ち着く秋以降。いま必要なのは原因を見極め、悪化させる行為(=間違った水やり)を止めること。涼しくなってから根本的に直す。この順番がいちばん木にやさしいと考えています。
まとめ
- 水切れも根腐れも葉に出る症状は似る。見た目で決めつけない。
- 枝先の真下を20〜30cm掘り、土の湿りと根の色・手触りを見るのが最短の診断。
- 毎日水をやって悪化しているなら、まず根腐れを疑う。
- 山陰の宅地は水田転用地や造成の締め固めが多く、植え穴に水が溜まりやすい。
- 根張りが埋まっていないか(深植え)も確認する。
- 大がかりな改良や移植は秋以降に。
掘ってみたけれど判断がつかない、どこを掘ればいいか分からない——そんなときはご相談ください。Takezo Farmでは、出雲市・松江市・米子市を中心に、庭木の状態確認から水はけ改善(縦穴通気・暗渠排水)、植え直し、剪定までを一貫してお手伝いしています。長く育ててきた木ほど、原因を見極めてから手を入れることが大切です。まずはお庭を拝見するところから、ご一緒させてください。




