読者からのご相談
Q. 駐車場のコンクリートが庭木の根で盛り上がってきました。この根、切ってしまってもいいのでしょうか。
松江市に住むMです。家を建てたときに玄関脇へ植えたケヤキが、15年ほどでずいぶん立派になりました。ありがたい話なのですが、去年あたりから駐車場のコンクリートに幹側からヒビが入り、今年はその部分が明らかに山なりに盛り上がってきています。しゃがんで覗くと、腕くらいの太さの根が土間の下へ潜り込んでいるのが見えました。知人からは「その根を切って打ち直せば済む」と言われましたが、切って木が枯れたり倒れたりしないか不安です。台風の時期でもありますし、本当に大丈夫でしょうか。
樹木医からの回答
この「根上がり(ねあがり)」は、街路樹でも住宅の外構でも非常に多いご相談です。結論から申し上げると、「根を切って打ち直す」といきなり進めるのはおすすめできません。切ってよい根と、切ると木の安全性そのものが変わってしまう根があるからです。
根がコンクリートを持ち上げるのは「太る力」
意外に思われるかもしれませんが、根は舗装を押しのけて進もうとしているわけではありません。原因は根の肥大成長、つまり毎年少しずつ太くなっていく力です。舗装の下にもぐり込んだ根が年々太り、その体積の増加が真上の土間コンクリートや縁石をゆっくり持ち上げます。街路樹の調査でも、まず幹に近い縁石が持ち上げられ、次に舗装下へ伸びた根が太ることでひび割れを起こしながら舗装を押し上げる、という順序が報告されています。

では、なぜわざわざ舗装の直下という浅い場所に根が回るのか。理由は水と空気です。樹木の細根の大半は地表近くにあり、地表下30〜40cmほどに全根量の約8割が分布するといわれます。加えて舗装の下地は沈まないよう意図的に硬く締め固められています。硬い層は根が伸びにくく酸素も乏しいため、根は条件のよい表層や、土と舗装のすき間、縁石沿いへと逃げていく。結果として、いちばん壊れやすい場所に太い根が並ぶわけです。
つまり根上がりは「行儀の悪い木」のせいではなく、根を張れる土の量と深さが足りていないというサインです。ここを直さないまま舗装だけ打ち直しても、数年でまた同じ場所が持ち上がります。
切ってよい根、切ってはいけない根
判断で見るべきは「太さ」と「幹からの距離」です。幹の近くから出る太い根は、水や養分の通り道であると同時に、木を地面につなぎ止める支持根でもあります。ここを断つと、その年は元気に見えても数年かけて樹勢が落ちたり、強風時に根返り(根ごと倒れること)を起こしたりします。切り口から腐朽菌が入り、地際が徐々に腐ることも珍しくありません。海外では幹の直径の6〜18倍を半径とする範囲を樹木保護範囲として扱う基準があり、日本でも根系保護範囲の基準づくりが進められています。現場での目安は次の通りです。
- 直径3cm未満:幹から十分離れていれば、切っても回復しやすい。
- 直径3〜5cm程度:本数を絞り、幹からできるだけ遠い位置で切る。複数本を同時に切らない。
- 直径5cm以上・幹の足元から出ている根:原則切らない。切るなら樹木医の診断を受けてから。
- 幹が傾いている、地際にキノコやくぼみがある木:太さに関わらず根を触らない。倒木リスクの評価が先。
ご相談の「腕くらいの太さ」は直径7〜8cm前後でしょうか。ケヤキは根を広く浅く張る樹種の代表格で、しかも大きく育つ木です。その太さの根を玄関脇という幹に近い位置で切るのは、おすすめできません。
山陰では、根を切るリスクが一段上がります
松江市をはじめ山陰は、秋の台風と冬の重く湿った雪という二つの負荷が毎年かかる土地です。根を切った直後の木は、枝葉の量に対して支える根が不足したバランスの崩れた状態になります。この状態で強風や着雪を受けると、健全なら耐えられる力でも傾いたり倒れたりします。どうしても手を付けるなら、台風シーズン直前の太根切除は避け、切る量を最小限にし、枝葉を減らして風の受け面を小さくする、支柱で補強するといった対策をセットで考えます。
相談前に見ておきたいチェックポイント
- 盛り上がっているのは土間の中央か、幹に近い端か。
- 持ち上げている根の直径と、幹の中心からの距離(メジャーで実測を)。
- ひび割れが年々広がっているか、ここ数年変わっていないか。
- つまずきや車の乗り上げなど、実害がすでに出ているか。
- 幹の傾き、地際のキノコ・樹皮のはがれ・空洞感の有無。
根を切らずに直す選択肢もあります
- 舗装の仕様を変える:根がある範囲だけコンクリートをやめ、透水性舗装や砕石敷き、分割した平板敷きにして動きに追従できる納まりにする。
- すき間のある基盤をつくる:街路樹の改修では、舗装強度を保ちつつ根が伸びられる空隙を持たせた「根系誘導耐圧基盤材」を舗装下に入れる工法が採用されています。根を深い方へ誘導し、再発を防ぐ考え方です。
- 防根シート(ルートバリア)を使う:新植時や配管・基礎の近くでは、根の進行方向をあらかじめ制御しておく。
- 植栽計画を見直す:ケヤキ・サクラ・クスノキなど大きく浅根性の樹種は構造物から十分離す。狭い場所には成長がゆるやかで根の張りがおとなしい樹種を選ぶ。
「木を残すか、舗装を守るか」の二択に見えて、実は根に居場所を用意することで両立できる場面がかなりあります。逆に、実害が大きく木のサイズも敷地に対して過大な場合は、伐採や移植を含めて長期的に判断したほうがよいこともあります。
まとめ
駐車場の盛り上がりは、根が押した結果ではなく、根が太る場所がそこしかなかった結果です。舗装だけ打ち直しても同じことが繰り返されますし、太い根を安易に切れば、台風や積雪の多い山陰では倒木リスクを自ら高めかねません。まずは根の太さと幹からの距離を確認し、木の健全性を見たうえで舗装側の納まりで解決できないかを検討する——この順番をおすすめします。
Takezo Farmでは、出雲市・松江市・米子市を中心とした山陰地方で、外構・エクステリア工事と庭木の管理を一緒にご提案しています。根上がりは、舗装の打ち直しだけでも剪定だけでも解決しないことが多い分野です。「コンクリートが割れてきた」「この木を残せるのか知りたい」という段階で構いませんので、どうぞお気軽にご相談ください。
