サザンカに触っていないのに腕がかぶれるのはなぜ?

「毛虫なんて一度も触っていないのに、腕だけが真っ赤になって、しかも何日も治らない」。8月の終わりから9月にかけて、山陰の庭でいちばん多く寄せられるご相談のひとつです。今回は米子市にお住まいの方からいただいたご質問に、樹木医の立場からお答えします。

ご相談:庭仕事のあと、腕だけがひどくかぶれました

米子市の住宅地に住んでいます。先週の日曜、庭のサザンカの生垣のまわりで草取りをしました。毛虫は一匹も見ていませんし、木にも触っていません。ところがその晩から両腕がチクチクと痒くなり、翌々日には赤いブツブツがびっしり。市販のかゆみ止めを塗っても引かず、一週間たってもまだ痒いままです。虫に刺された覚えがないのに、なぜこんなことになるのでしょうか。生垣は切ってしまったほうがいいのでしょうか。(米子市・50代)

樹木医の回答:犯人は「抜け落ちた毒針毛」です

お話をうかがう限り、原因はチャドクガの毒針毛(どくしんもう)である可能性が高いと考えます。チャドクガはツバキ・サザンカ・チャノキといったツバキ科の木にだけ発生するガで、その幼虫は長さ0.1ミリほどの微細な毒針毛を身にまとっています。蛹になる直前の幼虫では、その数は50万本にも達するといわれます。

この毛は肉眼ではまず見えません。刺さると毒液が皮膚に入り、直後から赤く腫れて痒くなり、1〜2日後に強い痒みをともなう赤いブツブツが出ます。そして痒みは2〜3週間続きます。「刺された瞬間の記憶がないのに、後から強烈に痒くなる」というのは、まさにチャドクガの典型的な出方です。

サザンカの葉裏に整列して群れるチャドクガの若齢幼虫
画像:Easyman (Wikimedia Commons) / CC BY-SA 3.0

触っていないのに被害に遭う理由

毒針毛はごく軽く、幼虫の体から簡単に抜け落ちて風に舞います。木の下を通っただけ、そばで草を取っただけで腕や首に付いてしまうのは、このためです。さらに厄介なのは、毒針毛が残るのが生きた幼虫だけではないという点です。卵の表面、脱皮した抜け殻、繭、成虫の尾の部分、そして駆除したあとの死骸にも毒針毛は残ります。「もう虫はいないから大丈夫」と思って落ち葉を掃いたときに被害に遭う方が毎年いらっしゃいます。

風で飛ぶという性質上、木のそばに干した洗濯物にも付くことがあります。生垣の近くが物干し場になっているお宅では、発生期だけ干す場所を変えるのも現実的な対策です。

いま9月は、年2回目の発生期のまっただ中

チャドクガの幼虫が出るのは4〜6月と8〜9月の年2回。つまり今まさに二度目の世代が育っている時期です。春に一度駆除したお宅でも、秋にあらためて発生することは珍しくありません。出雲市や松江市の海沿いのお庭でも、この時期の相談が増えます。「春に消毒したのに」と油断せず、もう一度葉裏を見てください。

かぶれてしまったときの応急処置

  • 絶対にこすらない・掻かない。こすると毒針毛が折れて皮膚の奥に入り込み、被害が広がります。
  • ガムテープやセロハンテープを、患部にそっと当てて剥がすのを繰り返し、表面の毒針毛を取り除きます。押し付けないのがコツです。
  • そのあと、勢いのある流水で十分に洗い流します。
  • 着ていた衣類はほかの洗濯物と分け、単独で洗います。
  • 症状が強い、範囲が広い、目や口の周りに出た場合は、市販薬で粘らず皮膚科を受診してください。

庭木のほうの対処──若いうちに「枝ごと」

チャドクガの幼虫は、若いうちは葉の裏に整列するように群れています。この段階なら、その葉が付いた枝をポリ袋でそっと包んでから、袋ごと切り取るのがいちばん確実です。切ってから袋に入れるのではなく、包んでから切る。この順番を守るだけで毒針毛の飛散が大きく減ります。取った枝は袋を二重にして密閉し、可燃ごみに出してください。

大きくなって木全体に散ってしまった場合は、薬剤散布に切り替えます。ただし薬剤で殺しても毒針毛は残るため、散布後の落下した幼虫や落ち葉の処理まで気を抜かないこと。業務用には大日本除虫菊(KINCHO)の「チャドクガ毒針毛固着エアゾール」のように、毒針毛を固めて飛散を抑える製品もあります。作業時は帽子・長袖・手袋・マスク・保護メガネ、首にはタオルを巻き、肌を出さないでください。作業後は服を裏返さずそのまま脱ぎ、単独で洗濯します。

生垣は切らなくて大丈夫です

ご質問の「生垣を撤去すべきか」ですが、その必要はありません。チャドクガは、枝が混み合って風通しと日当たりが悪い木につきやすい虫です。逆にいえば、内側の枝を抜いて風を通す剪定をしておくだけで発生しにくくなり、葉裏の点検もぐっと楽になります。サザンカの生垣なら、花芽を落とさない時期を選んで透かし剪定を入れるのが基本です。年に2回、発生期の前に葉裏を見て回る習慣がつけば、あの痒みとは無縁でいられます。

まとめ

触っていないのにかぶれるのは、あなたの不注意ではなく、チャドクガの毒針毛が風に乗って飛ぶからです。9月は二度目の発生期。葉裏に群れているうちに枝ごと処理し、風通しのよい樹形に整えておくことが、来年の被害をなくす一番の近道になります。

Takezo Farmでは、出雲市・松江市・米子市をはじめとする山陰地方で、庭木の消毒・剪定から生垣の仕立て直しまでご対応しています。「毒針毛が怖くて自分では触れない」「高い生垣で葉裏が見られない」といったご相談も遠慮なくお寄せください。