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木のお医者さん奮闘記
サクラ”ソメイヨシノ” 出雲市

☆☆ サクラの枝が10年かけて枯れてきた ☆☆

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古いサクラの木が10年間かけて枯れてきたというご相談がありました。確かに写真の左上は、葉がなくて枯れています。もともとは今の2倍の高さがあったが、枯れた枝を切っているので、徐々に小さくなってきているようです。同時に春の花も少なくなってきたということでした。

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近づいてみると、太い幹がボロボロに腐って剥がれ落ちているではありませんか。見るも痛々しい状態です。重体といわざるをえません。それにしても、なぜ、ここまで痛んでしまったのでしょうか。聞き取りや土を掘って根を観察するなどの調査をします。

このサクラは10年位前に他の場所から移植されてきたようです。根を観てみると、太い根がたくさん切られていましたので、移植のときに切ったのでしょう。その後、生長していないので根の切り口から腐ってきているようです。
土は、砂地で乾燥し、万年水不足といった感じでしょうか。ソメイヨシノは乾燥気味の砂地が生育環境としては適していますが、これだけ大きな木を移植して万年水不足となると、木にとっては辛い状況ですね。さらに、根の切り口や枝の切り口から入った雑菌は、毎年少しずつ樹木の組織を腐らせて、このボロボロの腐った幹に至ったわけです。

このままだと、来年の夏は越せないかもしれません。もうぎりぎりのところにきて、悲鳴を上げている状態です。

この状態を整理すると

①土壌が乾燥しすぎて、根から水を上げることができない

②幹や枝が雑菌により腐ってきている

大きくこの2点になります。

次に、どういう状態にしたら良いか整理すると

①土壌に適量の保水性があり、たくさんの根が出て、そこから水と養分を吸い上げる

②これ以上腐らないように殺菌され、①で取り入れた養分をもとに幹を太らせ、傷口をふさいでいく

ということになりますね。

では、どうすればよいか、対策としては

①今の土に保水性がある土を混ぜて、養分を施し、定期的に灌水を行う。

②現在腐っている部分を取り除き、殺菌剤を塗布する。また、直射日光が幹を痛めないように包帯を巻く

ということになります。

さっそく治療を開始しました。

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写真は①の土壌の改良です。サクラの根を痛めないように周囲をぐるりと掘り下げて、4種類の土をいれました。

入れた土は、保水性の高い土と有機物をたくさん持つ土といつまでも固まらない土と養分を持っている土です。

こうすることによって、水持ちがよくて、微生物がどんどん活性化し養分を与え続け、いつまでもかたく固まらない土ができあがるんです。

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写真は②の雑菌対策です。幹の腐っているところをきれいに削って、殺菌剤を塗布しました。

最終的には、サクラの力を高めて、自分の力で雑菌に打ち勝ってもらわなくてはならないのですが、

今は力が弱いので、こうやって手助けしてやります。

雑菌対策のように外部に施術することを外科治療といいます。

①のように、樹木内の力を高めるために行う施術を内科治療といいます。

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翌年、さっそく花を咲かせてくれました。何年ぶりの花!これはうれしいです。

まさに、生きている!!!という鼓動を感じる瞬間でした。

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そして、たくさんの葉を茂らせてくれました。枝先までぎっしりと葉をつけています。

これで、たくさんの光合成をして、ますます元気を取り戻してくれることでしょう。

サクラは生育旺盛な樹木です。クロマツのように一度いじけると取り戻すのにとても苦労するものもありますが、サクラは治療の結果がとてもはやく出やすいです。やりがいのある樹木ですね。

今回は日本人が皆大好きなサクラの木の治療でした。

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